再録: 2011/6/25 クロストーク:MOTTAI-NAI! あなたの写真は、世界でもっとモテるはず!


再録: 2011/6/25 クロストーク:MOTTAI-NAI! あなたの写真は、世界でもっとモテるはず!

(抜粋)

柿:柿島貴志

D: Dan Abbe

【日本の写真文化】

柿>Danさんの眼には、日本の写真の状況はどう映るんですか?

D>初めて東京に来たときは、とても驚きました。ギャラリーとか写真家、そしてカメラ屋がすごく多い。とくに東京には写真文化がすごく盛んだと思います。写真雑誌は、今はちょっと減りましたが「アサヒカメラ」とか6、7誌もあるし。そしてギャラリーも写真集も、数だけでなくレベルも凄く高いと思います。有名なギャラリーも新宿のアマチュア系のギャラリーでも、アメリカと比べてテクニックも凄く高い。

アメリカではコンセプチュアルな作品が多いけれど、コンセプトと作品を比べてみると、コンセプトが強過ぎるものがたまにあります。日本の場合はそのようなコンセプトが無い作品でも、写真と写真家の人生が一体になっている作品が多いです。

柿>日本の写真コミュニティにも興味があるそうですね。

D>コミュニティーの存在はとても大事だと思います。サンフランシスコにいる時、一人で写真にかんするブログを書いたんですが、周囲に興味を分かち合える人が少なかったんですよ。でも東京に来て、色んな人と写真の話ができるのに感動しました。写真の哲学でもカメラでも、ほんとにいろんな話ができる。

柿>意外ですね。日本から見ると、アメリカは写真先進国で、マーケットはもちろんコミュニティも日本と比べようもないほど発達していると思っていたのですが。

D>マーケットが大きいだけでコミュニティの規模は小さいかもしれない。アメリカだと、みんな自分の活動に皆は自分の事をやっていて、サンフランシスコやシカゴでもほとんどない。ニューヨークでは少しはあると聞いていますが。
そして作品に関しては、大学や大学院を出る人は、もちろん全部ではないがコンセプチュアルな作品制作をする人が多いです。

柿>日本の写真はスキル的にはプリントテクニックも工芸的にレベルが高く、かつ良い意味でコンセプトから或る程度自由にやっているところが、一人のアメリカ人として思う日本写真の面白い所だということですね。

D>日本に来た最初の頃、新宿のアマチュアギャラリーで、自分でフィルム現像して、トイレに暗室を作って自分でプリントした作品の展示を観た時はビックリしました。アメリカでは珍しいですね。

 

【日本の写真がMOTTAINAI状態にある原因】

柿>以前から私とDanさんはよくこういう話をしているのですが、先日Danさんが、ふと「だから日本の写真はもったいないんだ。」と言ったんですよね。今回、そのフレーズをそのままトークショーのタイトルにした訳ですが。ではどの辺りが原因で日本の写真がもったいなくなっているのか、どこがウィークポイントなのかという話をして行きましょう。

D>海外からみた時、日本の写真は分かりにくいイメージがあります。1週間前にニューヨークで写真エージェンシーの人と話をしたのですが、彼は日本の写真には興味があるが良くわからないと言っていました。
理由はいくつもありますが、特にインターネットの使い方は、しばしば問題になっています。
NYのブログに日本の写真展のことについて書いた時、そのブログの編集者がこの写真家の作品画像を送ってくれと言ってきました。僕はその写真展の展示風景の写真は撮っていたものの、その編集者はブログのトップに掲載するために、作品そのものの画像が欲しかったのです。そこでインターネットで写真家の名前で検索して探しましたが、ほとんど見つかりませんでした。

柿>ウェブサイトにjpgでもなんでもいいけど、その作品の画像がみつからない、もしくはわざと載っけていないと。でもアメリカではその写真家を雑誌とかブログとかその取り上げようと思うと簡単にみつかるのですか?

D>そうそう、16歳のアマチュア写真家でさえも、フリッカーなどを使って何百枚も作品を見せているし。

柿>作品は良いが、作品以外のところ、たとえば入手しにくいというところで機会を逃しているという感じですね。あと、日本の写真自体は面白いと思われているのに、分からないという事ですが、やはりテキスト等が不足しているのでしょうか?

D>海外に今の日本写真の情報などは届きにくい。どこで今の日本の写真文化がわかるかも知らないです。それはソーシャルネットワークの問題かもしれません。

柿>全体的に言えるのは、日本の写真は海外の人が観ると面白そうなんだけど、面白そうで止まっているという事ですね。そこからどうやってコンタクトをとろうとか、jpegをもらってうちのブログで紹介しようと思う時に画像が無いとか、そういうところがもったいないと。
ところでDanさんがおっしゃっていた「Network effect」とは簡単に言うとどういう事でしょう?

D>Network effectとは、例えばこうです。目標が海外のギャラリーで展示をするというときに、自分の作品を一度アップします。その写真を海外のギャラリーの人が直接観る事はないけど、他の人が偶然観て、その人のブログで紹介して、次に他の人がツイッターでリンクして…というふうにして最終的にギャラリーの人が観るというケースです。

柿>日本の場合はそんなネットワークが、どこかで切れてしまっているのでしょうか?

D>例えばツイッターには日本だけの世界はあるけど、海外とのブリッジになるような人はあまりいない。井関ケンさん(BETWEEN THE BOOKS)はたまにするけど。

柿>ツイッターは日本でもユーザーが多いけど、日本の中で終わっている。それはやはり英語の問題も大きいですが。他になにかインターネットでの問題点などはありますか?

D>ブログでビックリしたのは、今日本では他の色々な写真家を紹介しているブログがあまり無いことです。ブログは写真家の日常の会話、例えば「今日はこれをして、昨日はあれをした」みたいなパーソナルな事が多い。またTwitterは英語と日本語は全然違いますね。Twitterは140字しか使えないけど、日本語の140字で書ける量は英語より多い。なので日本での使い方はちょっと違っているかもしれません。日本語だとほとんど日記や小説が書けてしまう(笑)

柿>中国語が一番書けるといいますよね(笑)

D>Facebookは良いとされる使い方が毎日のように変わっている。だからアメリカ人でもどういう使い方が正しいかは分からない。日本から海外の人にどう使うべきか、まだ定まっていないです。

柿>Englishの問題に戻ります。英語の問題は大きいですよね。

D>解決策は一週間ではだめだけど、少しずつでもいいから英語を勉強すればコミュニケーションも取れてきます。頑張って英語でtwitterを使えば良い反応が来ると思う。私も2、3ヶ月前から日本語でtwitterを使っています。文法の間違いを言ってくる人もあまりいないし。

柿>ある意味140字しかないので、(ちゃんとした文法でなく)日本語でも省略して書くし、そもそも写真家のためのコミュニケーションなので、ビジネス英語を使う必要はないし。伝わればいい。完全にちゃんとしゃべれるようになりたいなら英会話学校で2年ぐらい、または海外に行ってたたかれて勉強したほうが良いと思いますね。

【荒木・森山シンドローム】

D>海外では一番有名な荒木経惟と森山大道しか知らない人が多い。日本の写真家=荒木と森山になっているのがもったいないです。

柿>イギリスの美大の時、学校の図書館に行くと荒木さんと森山さん、そして杉本博司の本も置いてあったなあ。あとHIROMIXもありましたね。荒木&森山が海外で有名なのは、べつにその2人が一生懸命海外に連絡とったりインターネットをやったした訳ではなく、日本ですでに有名になってて、コミュニケーションに長けた誰かが海外とつないでくれたわけですよね。海外で有名になって国内での評価が、さらに上がった訳です。

D>海外で日本の写真家に詳しい人はすくないと思う。本屋さんでもすごい人は現代の日本の写真集も知っているけど、他の人は日本で有名になって海外のギャラリーで開催された写真展で知る。川内倫子さんはNYで写真展をやっています。本は日本ではFOILが作ってますが、今の本はApertureで出しています。

柿>新進気鋭、ニューカマーがダイレクトで海外に繋がる事はあまりないのでしょうか。

D>木村伊兵衛賞を穫っても、海外ではそれほど有名にはならないです。そもそも木村伊兵衛賞はマニアックな人以外しらない。

柿>それもガラパゴス化なのかもしれないですね。木村伊兵衛と写真新世紀は日本ではとても有名だけど、海外では「なにそれ?」って感じだとすると。あと、海外の写真集マーケットで評価が高い日本の写真集もやはり60−70年代ですよね。

D>それは荒木と森山のProvokeシンドロームかもしれない。(笑)いまだにその流れで海外には理解されていて、2000年代、2010年代に活躍している人達はまだまだダイレクトに繋がっているとは言えないです。

柿>インターネットとはなにかというと、本来はちゃんと使えばお金がなくても、日本でギャラリーがついてないひとでも海外と繋げられるツールのはずなんですね。私の知っている人で北義昭さんという写真家がいるのですが、彼は凄い根性があって、自分でプリントを抱えて海外のギャラリーのドアをたたいて作品見せて、契約を2、3件とって来たという人なんです。でもそんな人は稀なんですよね。やはり普通はそこまで勇気が無かったり、そもそも行くお金がなかったり。インターネットなどを利用して自分のプロモーションもオンラインでやっていくという事になると思います。荒木&森山ほどのネームバリューがなくても、写真は十分に面白い人も大勢います。でも皆さんチャンスがあるのにいまいち活かせていない。

D>今私がブログでやっているのは森山と荒木しか知らない人に現代の日本の写真家を紹介するためです。18歳の写真家や大学生の写真家とか。NYなら詳しい本屋さんに聞く事も出来るけどNY以外はチャンスがない。

【Dan Abbeが好きな日本の写真家】

柿>今回Danさんに好きな写真家として挙げてもらったのですが、まず植田正治です。

D>高校の時に初めて知って以来、だんだんに好きになった。構図が強いですね。植田正治美術館にも行きました。今はもっと写真家の人生と作品が一体化した写真家に興味が移っていますが。

日本に来て日本の写真を調べて行くうちに森山大道が好きになりました。当時自分もストリートスナップをやっていたこともありますね。

柿>東松照明も挙げてくれてますね。

D>サンフランシスコに住んでいた時、1995年くらいだっと思いますが、サンフランシスコ近代美術館で東松照明の大きな写真展があり写真集も出していたのでよく観ました。

柿>森山大道どの辺が好きなのですか?

森山大道は強いコントラストがカッコいいと思った。Youtubeで彼の撮影の様子を見た時(ファインダーを覗かず)こんな感じで撮ってたりっこ良いなーと(笑)

柿>結構形からはいるんですね(笑)彼みたいなスタイルの写真家はアメリカでは?

D>僕が一番好きで、そのスタイルならゲーリーウィノグランドかな。森山さんの作品はダイアリー(日記)みたい。ウィノグランドはそこまでパーソナルではなく(写真家と作品のあいだに)距離を感じる。

柿>日本独特のパーソナルな作品スタイルですね。荒木経惟さんに代表される「私写真」が有名ですが。作家の人生とそれほど剥離しない距離で写真を撮っていく。でも日本では今、コンセプトが無いといけないとすごく言われます。単なるスナップが面白くないとか。でもアメリカ人のDanにとってはそこが面白いのかな?

D>うん、もちろん全ての作品が面白い訳ではないけど、コンセプチュアルな部分が多過ぎると残念ですね。個人的には日本の写真家はコンセプチュアルでない方が好きな作品が多いです。

柿>僕がイギリスで写真を学んでいた今から10年ちょっと前は、アンドレアス・グルスキーなどに代表されるドイツのフォトグラフィーが全盛でした。現代美術としてタイポロジーとか、社会学の概念を写真は持っていなければいけないと盛んに言われていて、そのため学校のカリキュラムが変わるほどでした。イギリス人とかコンセプトが上手いんですよ。プレゼンとかもすごくしゃべる。でも写真が全くダメな人が多かった。日本人としては理屈は良いんだけど言語化できない、テキストでは表せない、もやもやしたものや、じんわりしたものがもっとあっても良いといつも思ってました。良い作品には、いわゆる狭い意味でのコンセプトではなくて哲学というか、テーマとか入っていると思う。

ほんとに意識して書いたコンセプトではなく、日本の写真家が無意識で撮っている写真の中には、今までで培った経験とか人生観が入っていて、外国人の方がそこを素直に見る事が出来るのかもしれないなとDanと話していて思います。

 

【日本写真の熱】

D>今日は写真集を3冊持って来ました。これは田山湖雪さんという人なんですけど、東京造形大を卒業して自分の写真集を作ったんですね。全部手でバインディングまで。3日ぐらいかかるそうです。全くのアマチュアがとても良い本を作るのが日本の特徴ですね。

柿>今zineが話題ですが、この田山さんの本はzineではないですね。本来zineは簡易的なもので、お金もない写真家が印刷もできないから、フォトコピーやホチキスなどを使い自分で作るものだったのです。しかし最近はインターネットでそこそこのクオリティーのものが作れるようになりzineのマーケットが形成され、専門のフェアもあります。この田山さんの本はとても丁寧につくっていて、逆にコストがかかっていると思います。ここまでやることはあまりアメリカではないのでしょうか?

D>そこまでわざわざ自分の本をちゃんと作ることはあんまりないですね。次は大阪でバキュームプレスという出版社があるんですが、そこで出した阿部淳の『市民』という写真集です。これはたった2000円で販売していました。こういうのが日本のいいところですね。小さい出版社でも、ものすごくクオリティーの高いものを出すのがいいです。

柿>アメリカとかならApertureとか大きな出版社が出しますが、日本は写真集が売れないという事情があり、大手の出版社が写真集事業から撤退しています。朝日新聞とか昔は図鑑みたいな分厚いのをバンバン作っていたのですが。いまは○○舎みたいな小さい出版社が頑張って、時には採算度外視で作っているというのが現状なんですけど、そういうのも日本のマーケットなんですね。儲かるかどうかとではなく、田山さんの写真集にしてもあれでいくら儲かるというよりは写真集を作りたいというモチベーションを感じます。日本人は熱い想いで写真とつき合っているのに、海外にはその熱が伝わっていないのかもしれません。

D>最後は澁谷征司の『Dance』です。赤々舎はこの中では一番大きい出版社ですね。この作品はほとんど無意識で撮った、コンセプトに縛られない作品の良い例だと思います。5年間撮り溜めたものを編集して構成しています。
この3冊は今私が良いと思う写真集で、すべてブログに書き宣伝しました。海外の人はここに挙げた作品や日本の写真家はほとんど知らないので、それが個人的な動機となりブログやFacebookで紹介しています。海外の人が持つ日本写真のイメージと、現在の日本写真の文化との間にすごいギャップがあります。それがまた荒木森山シンドロームに繋がるのです。

柿>日本の写真マーケットは本当に凄い熱を持っていて、若い人が儲かる、儲からないに関わらず自主ギャラリーとかzineとか作って頑張っているのに、海外ではいまだに荒木&森山だけが日本の写真になっていて、日本の写真が外に出て行ってないと。それは確かにもったいないですね。

 

 

 

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